感情は、人から人へと広がっていきます。
私たち一人一人の感情や行動が、意外なほど広大な社会的ネットワークの中で影響を持ち、広がっていくことがわかってきました。
幸せも広がります。
自分発で、周りの人をもっと幸せにしましょう!
感情が広がるわけ
私たちには、人間関係を築き保つために役立つ、2つの特徴があります。その特徴ゆえに、感情は人から人へと伝わっていくと考えられています。
1つは、他人の外見・表情を真似ること。
2つ目は、そのように他者の表面に出てくるものを真似ることで、その内面の状態を自分のものとすることです。
私たちは人と交わるあらゆる場所で、表情や発生、態度を無意識に同調させる傾向があり、その結果、感情の状態も同じなります。
相手が笑うと、自分も笑い、楽しい気分になる。
相手の表情が恐怖でひきつれば、自分も警戒心が高まる。
これは「感情の求心性」や「顔面フィードバック理論」と呼ばれるもので、顔の表情を作る筋肉から信号が脳に送られ、その信号を反映した気分が作られます。
人の表情は原始の時代から生存のために、また他者とコミュニケーションをはかるために発達し、利用されてきました。
人は他者の表情を読む能力を発達させ、恐怖や危険を感じ取ることで、あるいは気持ちを通い合わせて共感し合って、人は生存を図り繁栄してきたと考えられています。
幸せも広がる
家族間での感情の広がりについての研究があります。
それによると、感情の経路で最も強力なのは、娘から両親に向かうものでした、
逆に、親の感情の状態は娘にはあまり影響はなく、父の感情は妻と息子に影響するものの、娘への影響はあまりみらなかったとのこと。
父が仕事から帰ったときは特にそれが顕著で、帰宅した父親の機嫌が悪いと、妻や息子にはすぐに影響して、家全体が暗い雰囲気になってしまいがちなのだそうです。
看護師やスポーツ選手、会計士のチームでも同じような研究が行われています。
焦点は、幸せでやる気にあふれるメンバーによって、チームの雰囲気やパフォーマンスに影響はあるのか、あるとすればどのような影響があるのか、といったことです。
結果としては、一人のプレイヤーの幸福とチームメイトの幸福は強く結びついており、チームメイトの幸福度が増すと、チームのパフォーマンスは良くなる、ということが明らかにされています。
幸せの広大な波及
家族や職場など、比較的密で狭い範囲で特定の感情が広がることは、経験上思い当たる節のある人が多いのではないでしょうか。
では、幸せな人の友達の友達は幸せか?
さらにその友達は?
1人の幸せが社会的ネットワークのどこまで波及するのか、ということについての調査があります。
ハーバード大学医学部ニコラス・クリスタキス教授(当時)らは、もともとは心臓疾患の研究で蓄積されていた記録(フレーミングハム心臓研究)を使って、ネットワーク内における感情の伝達を測定しました。
30年以上にわたる期間、1万2千人以上の人の、友人・親戚・同僚・隣人に関しても詳細な情報を含む、膨大な記録です。
マサチューセッツ州フレーミングハムは結びつきの密なコミュニティであるためこのような調査が可能であったとのことで、クリスタキス教授らはこの膨大なデータからネットワークを描くことにより、「3次の影響のルール」を発見しました。
ある人の感情や行動が、直接の友人(1次)、友人の友人(2次)、友人の友人の友人(3次)にまで影響するというものです。
幸福に関しては、以下のように結論づけられています。
幸福の波及効果
1次の関係 幸せな人の友人:幸福度が約15%アップ
2次の関係 幸せな人の友人の友人:幸福度が約10%アップ
3次の関係 幸せな人の友人の友人の友人:幸福度が約6%アップ
4次の関係 効果なし
人間関係における幸せの影響は、小さいように思われるかもしれませんが、ハーバード大学の研究によると、収入が1万ドル(100万円~120万円程度)増えても幸福度が2%程度しか上がりません。
収入を増やそうとして家族や友人と接する時間を減らすよりも、大切な人が幸せになるようなことに努める方が、ずっと幸福度が高まると言えます。
幸せのその他の波及効果
以上、幸せが社会的ネットワークを通して広がる波及効果について見てきました。
しかし幸せが広がるのは、関係のある人の間だけではありません。幸せは、面識のない人にも広がります。
ドミノ効果
『親切は脳に効く』の著者デイビッド・ハミルトンは、互いに知らない人同士の中で親切な行動が広がっていくことを取り上げて、このように述べています。
親切な行動はそれを目撃した人の気分を高め、別の人にもその親切を伝えようという気にさせ、ほかの人たちの気分まで高めていく。
これは「波及効果」、または「ドミノ効果」とよばれている。
「親切な行動」は、親切にされた人だけでなく、その行為を行った人、さらにはそれを目撃した人の気持ちを高め、幸せな気分をもたらします。
全く面識のない人の親切が思いがけないところで幸福感をもたらし、広がっていくのです。
幸せのバタフライ効果
「バタフライ効果」とは、初期条件の僅わずかな差が、その結果に大きな違いを生むことを言います(コトバンク|大辞林 第三版)。
米国の気象学者ローレンツが1972年に行った「ブラジルでの蝶のはばたきがテキサスに竜巻を引き起こすか」という講演の演題に由来する。
幸せでも、同じことが起こる可能性があります。
私たち一人一人が幸せを意識して少し生活を変えたら、それが思いがけないところの大きな変化に結びつくかもしれません。
情けは人の為ならず
「情けは人の為ならず」ということわざがあります。
この意味を、「人に情けを掛けてやることは,結局はその人ためにならない」と誤解している人が多くいますが、本来の意味は、「人に情けを掛けておくと,巡り巡って結局は自分のためになる」です。
幸せな気分の時には、誰かに優しく、親切にしてあげたくなるものです。
その優しさや親切は、直接的には自分の利益とならないように見えるかもしれませんが、親切にした自分自身も良い気持ちになるだけでなく、多くのプラスの効果をもたらしています。
また、優しさや親切な行動は、巡りめぐって思いがけない形で戻ってくるかもしれません。
情けは人のためではなく、自分のためになるのです。
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