ハピネススタディで幸せになろう!幸福学の研究成果に基づき、幸せになるために必要な技術を集めています。

幸福・幸せ研究室

幸せになる技術 ―運動しよう!

運動すると、さっぱりして良い気分になる。
そんな風に感じたことのある人は多いのではないでしょうか。

運動は心の健康と深く関わっており、幸福度にプラスの影響を与える様々な活動の中でも、とても効果的であることがわかっています。

運動が幸福度を高める理由

運動の利点は多数ありますが、中でも幸福度の向上に大きく関わる点を3つ挙げます。

自己効力感、自己統制感が高まる

運動やスポーツを行うと、自分の体や健康を自分自身で管理している感覚が得られます。運動により体力の増強が実感できたり、見た目が格好良くなってきたりすると、自信もつきます。

そのため、自分にはできる信じ、自分にはその能力があると感じる「自己効力感」、自分の行動により自分の健康が高まっていると感じる「自己統制感」が高まり、同時に自尊心も高められていきます。

ポジティブ感情が増え、ネガティブ感情が減る

例えばジョギングの場合、無心に走ることで「フロー」が体験できます。ポジティブな感情を抱くことが増え、不安や恐れなどのネガティブ感情が減っていきます。

幸せホルモンが分泌される

ウォーキングやジョギングなど、一定のリズムで継続して行われる運動により、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」が分泌されます。激しい運動よりは、比較的ゆっくりで単調な運動の方がセロトニン分泌には向いています。ヨガやストレッチも有効です。

たった20分の自転車こぎでも幸福度が上がる!

運動する日が増えるほど活力が高まり、それが最大になるのは、週に6日。でも、週に2日以上運動する人は、運動していない人に比べて、圧倒的にストレスが少なく幸せな気分で生活していると言われています。

またある実験では、無理のない程度の負荷で20分間自転車こぎをすると、その後2~12時間にわたって、いつもよりはるかに良い良い気分で過ごせることがわかかりました(継続時間は個人差あり)。

たった20分の運動で気分が上がるんです。

厚生労働省の国民健康・栄養調査結果(平成29年度)によると、運動習慣のある人(1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している人)の割合は、男性で35.9%、女性で 28.6%。日本では、3割程度の人しか習慣的に運動していないのでした。

毎年3月に幸福度ランキングが発表されると、日本の幸福度の低さが話題になります。もし、もっと多くの人が運動を習慣にしたら、日本の幸福度はもう少し上がるかもしれません。

ポイント

運動は私たちの幸福度を上げてくれますが、体に合わない苦しい運動を心底辛いと思いながら行うのは逆効果。楽しみながら続けるのがポイントです。

長年運動していなかった人は、体を動かすことに慣れるまで、少し時間がかかるかもしれません。無理のない範囲で、少しずつ運動する時間や運動の強度を調整していきましょう。

疲れている時こそ運動

運動することが体にも幸福度にも良いとわかっていながら、運動しない理由は多くの場合、「時間がない」または「疲れている」ではないでしょうか。

時間がない場合は、時間の使い方や生活の見直しをして、運動するための時間をひねり出すことをお勧めします。

疲れている場合は、「疲れている時こそ運動」と唱えるなどして、運動する方向に意識を向けましょう。疲労回復の薬やサプリメントを摂るよりも、運動する方がはるかに疲労回復には効果的ということが明らかになっています。

休みの日の活動も、疲れているからと言って動かないでいるのではなく、動きやすい服装で外に出ましょう。テレビやスマホを見て一日ゴロゴロしているより、ウォーキング等で身体を動かす方が、ずっと体にエネルギーが満ち、幸福度が上がります。

運動しないと憂鬱になる

うつ病と診断された患者が、1回30分の運動を週3回行ったところ、抗うつ剤を服用することと同じ効果が得られた、という研究結果があります。

しかも治療の終了後、運動療法を行った患者よりも、薬物治療を行った患者の方が、うつ症状の再発率が4倍高かったそうです。運動って、すごいですね。

でも、運動が抗うつ剤と同じ効果があるのかというと、そうではなくて、「運動しないこと」が「憂鬱になる薬を飲んでいるのと同じ」ようなもの、なんだそうです。

運動不足って、怖い。

人の体は、運動するようにできている

歩かずに車やエスカレーターで移動したり、机の前で椅子に座って、パソコンに向かって一日の大半を過ごしたり、というのは現代では当たり前に行われていますが、何百万年というヒトの進化の歴史を振り返れば、ヒトの体にとっては受け入れがたいことなのだと納得がいきます。

人の体は、獲物を追いかけて走ったり、敵から逃げるために走ったり、食糧を探して歩くようにできている。そう考えれば、運動するのが当たり前、と思えてきませんか?

もし納得がいかなかったら、近年刊行が相次いでいる、進化生物学の研究成果を一般向けにわかりやすく紹介する著作をお勧めします。動かなければヒトは病むということが、きっと腑に落ちることでしょう。

例えば、これらのような本です。

ちなみに私は、習慣的に運動するようになって10年ほどになり、幸福度の高まりは身をもって実感しています。また、椅子にはあまり座らないようにしていて、この原稿も立って書いています。腰痛には縁がなく、ぎっくり腰になったこともありません。腰痛の元凶は「座る」という習慣にあるという仮説もありますよ。

さあ、ぜひあなたも運動しましょう!

運動について参考文献

トム・ラス 、他『幸福の習慣』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年

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