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幸福・幸せ研究室

幸福度を上げるエクササイズ ―「良かったこと」を3つ、毎日書きだす

昨日、何かいいことはありましたか?

「良かったこと」を思い出し数えるというのは、とてもシンプルで簡単なことですが、実は幸福度アップにはかなり効果がある方法です。

この記事では、「良かったこと」を毎日書くというエクササイズを紹介します。

「良かったこと探し」の効果

自分にとって良かったことについて注意を向けることの効果については、複数の研究グループが調査してきました。

その方法の詳細はグループによって異なりますが、その結果は常に同じでした。

自分がありがたいと思う事柄を日常的に数え上げることで、人生はより幸せに、より満足できるようになるのです。またある調査では、幸福感が増大するだけでなく、同時に抑うつの症状の軽減も見られました。

この「良かったこと探し」の効果は長期的に持続します。1週間以上にわたって毎日実施した人は、半年後の追跡調査でも、このエクササイズをしなかった人よりも幸福度が高く、落ち込む回数が少なかったことが報告されています。

反芻思考とネガティブバイアスの緩和に

世界で最も影響力のある女性の一人と言われるオプラ・ウィンフリーは「意識を向けるものは拡大する」と述べました。

人の意識には「ネガティブ・バイアス」があり、ネガティブなことに向きやすくなっています。また、ネガティブなことを繰り返し考える反芻思考は、至極簡単に癖になってしまいます。

悩みや問題などに気持ちを向けてばかりいると、それが心の中でどんどん大きくなってしまうのです。

この悪循環を断ち切るために実践したいのが「良かったこと」の日記です。

私たちの脳にとって、2つの相反する感情に対して同時に注目することはとても難しく、怒りと喜びに同時に気持ちを向けることはできません。

今回この記事で紹介したエクササイズを実践すると、「良かったこと」に気持ちを向けることで、ネガティブな感情に注意を向ける機会を減らしていけます。

反芻思考が癖だったり、ネガティブな感情に支配されがちな人におすすめのエクササイズです。

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「良かったこと」日記の方法

では、「良かったこと」日記で幸福度を上げる具体的な方法を紹介します。

冒頭に記したように、非常にシンプルで簡単なことなので、マニュアルや方法論など不要と思われるかもしれませんが、効果を高めるためにはいくつかポイントがあります。

ポジティブ心理学の研究の成果をしっかり盛り込んだ内容なので、ぜひ参考にしてください。

step.1 「良かったこと」を書き留める場所を用意

手帳や日記、アプリ、「良かったこと」日記用のノートなど、良かったことを書き留める場所を用意します。

step.2 毎日「良かったこと」を3つ書き出す

毎晩、その日の良い出来事を3つ書き留めます。

この種の実験は何度も行われていて、いくつ書き留めるのが良いかという点についても考察されています。10個書き留めるようにしたらあまり良い結果がでないといった結果もあり、現在では3つが最も良いとされているようです。

タイミングは、夕食後、就寝前など夜寝る前が良いでしょう。

朝など一日の始めに書き出すようにした実験では、一日の終わりに書き出すほどの成果はありませんでした。

書き出す内容は、ちょっとしたことから重要度の高いものまで何でも大丈夫

寝坊したのに始業に間に合った、ランチをおごってもらった、といったことでもいいし、社長賞に内定した、祖母の手術が成功した、といったことでもOKです。

step.3 良かったことを説明する

良かったことを書いたら、なぜその出来事が起こったのか、その出来事がなぜ良いことなのかを、簡単でいいので説明してみましょう。

私たちは普段、何か良いことが起きてもそれについて深く考えることはなく、その出来事に対して感謝する機会を見逃してしまっています。

良いことが自分の身に起こることが当然と思うのは、得策ではありません。

良い出来事について説明しようとすることで、より深い思考が促され、感謝の思いが広がります。

ポジティブなことに対してより注意を向けることで、心配、不安、苛立ちといったネガティブな感情を持つ余地が少なくなっていきます。

step.4 継続する

最低1週間、できれば3週間続けてみましょう。3週間続けられると習慣化できる確率が上がり、また継続することで幸福度が一層上がります。

「今日書く『良いこと』は何かな」と意識しながら過ごすと、以前なら見逃してしまっていた良いことに気付きやすくなります。

自分の人生に起こる良かったことを、毎晩どんどん書き留めていきましょう。

「良かったこと」日記のバリエーション

上記の方法は、ポジティブ心理学の創始者の一人であるクリストファー・ピーターソンさんが自著『ポジティブ心理学入門』で紹介しているものです

他の研究者が提唱する類似の方法もあります。

ポジティブ心理学の研究者として非常に著名なバーバラ・フレドリクソンさんは『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』の第10章「ポジティビティを増やす」で、「恵まれている点を数える」ことを提唱。

その具体的な方法として、前述のオプラ・ウィンフリーが呼びかけた「毎日うれしかったことを5つ書き留める」ことを紹介しています。

ウィンフリーさんが「毎日うれしかったことを毎日5つ書き留めると人生の見方が変わる」と述べたことを受けたものでで、ポジティブ心理学から見ても的を射ているとしています。

日記を書く回数や手法について

フレドリクソンさんは同上項の中で、「良かったこと日記」と似た手法の「感謝の日記」について、感謝の日記は毎日ではなく週に2、3回が良さそうであることを書き添えています。

感謝の日記については確かにそのような研究結果が複数あります。

また日記が苦手な人におすすめの習慣として、
・食前に感謝の気持ちを唱える
・物事が終わる時にそこで起きたいいこと、一緒にいた人、その場所に対して感謝するようにする
といったことを提案しています。

日記を書く回数や、書く・唱える・思いを抱くといった手法については、自分に向いている・負担感を感じない範囲で行うのが良いように思われます。

「ポリアンナ症候群への誘い」ではない

1980年代に「愛少女ポリアンナ物語」というテレビアニメが放送されました。

原作はエレナ・ポーター『少女ポリアンナ』。ポリアンナは「よかった探し」と称してどんなことが起きてもその中からよかったと思えることを探し出し、常に明るく振る舞おうとします。

極端なポジティブシンキングでポジティブに逃避する心的疾患は、この主人公ポリアンナにちなんで「ポリアンナ症候群」と呼ばれます。

ポリアンナ症候群では問題に直面した際などに、
・微細な良い部分だけを見て満足し、問題の解決に至らない
・現状より悪い状況を想定して、そうなっていないことに満足して改善に至らない
といった状況が起こり得ます。悲観主義が形を変えたものという説もあります。

「良かったこと」を3つ書き出すエクササイズは、ポリアンナ症候群になろう、というものではありません。

幸福度を高めるのにポジティブな気分は大切ですが、ネガティブな気分にも役割があります。「良かったこと」に注意を向けてポジティブな気分を増やすことと、極端なポジティブシンキングでネガティブなことから逃避することとは異質なものです。

参考

  • B!