困っている人がいたら助けなさい。
友達には親切にしなさい。
多くの人が幼少の頃から何度となく言われてきたのではないでしょうか。
日本は公共の場で若干親切にしにくい国のような気はします。だからといって親切にする機会を逃すのはもったいない。どんどん親切にしましょう!
親切とは
相手の身になって、その人のために何かをすること。思いやりをもって人のためにつくすこと。
人間関係は、人の生存にとって最も重要な要素であると言われており、私たちが、身体だけでなく心も健康で幸せであるためには、社会とのつながりが非常に重要です。
幸福に関する膨大な研究が明らかにした、最も確かな結果の1つは、あまり幸福ではない人よりも、幸福な人の方が、人間関係がうまくいっている、ということ。
社会とのつながりを保ち、人間関係を育て強固にしていくための行動習慣として、人に親切にすること、社会とのつながりに力を注ぐことは、もっと幸せになる効果的な方法なのです。
そして、人に親切にすると、親切にされた人だけでなく、その行動をとった人にもいい影響を与えるということが研究の結果明らかになりました。
親切は快楽よりも効く
自分自身の楽しみを追求してばかりいるよりも、他人の幸せを考える姿勢を持っている方が、長い目で高い満足度が得られる、という事実は、ポジティブ心理学において発見された中でも特に確実なものです。
遊んですごす、映画を見る、おいしいものを食べるといった、多くの人が「愉快だ」「楽しい」と感じることが一時的な快楽をもたらすのに対して、近所のお年寄りのために荷物を運んであげるとか、友達の宿題を手伝ってあげるとか、家族のために家事をするなど、通常「人の役に立つ」と考えられる行動は、幸福感の高まりがより長く続くことがわかっています。
親切の効用
自尊心が高まる
親切な行動をとると自分は人の役に立っていると思えるなど、自尊心を高めることにつながります。
社会不安障害やうつの改善
脳内が変わる
親切な行動をとることで、脳内の神経伝達物質に変化が起きます。
- ドーパミン
- セロトニン
- オキシトシン
- エンドルフィン
といった物質が生成され、完全に合法的に、ハイな状態が作られるのです。
また、親切を日常的に実践していると、脳のネットワーク構造が変化し、親切から生じる幸福感を組み込んだ回路が作られていきます。
オキシトシンの分泌による効果
親切によって増えるオキシトシン。
これによる効果には特筆すべきものがあります。
心臓と血管に好影響
オキシトシンはNO(一酸化窒素)とANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)を作り出して、心臓と血管に良い影響をもたらします。
NOは、血圧を正常に、また血液循環を健全に保ち、血液や栄養分が全身に届くようにするために必要な物質で、加齢に伴って減ります。ANPは動脈を拡張し、血圧を下げます。
NOは、人のことを大切に思うだけでも増えます。
- 人に笑顔を向ける
- 人の話に耳を傾ける
- 人のいい面を見て欠点ばかりを気にしないようにする
といったことでNO濃度が上がり、寿命を伸ばすのです。
マイナスの感情をやわらげる
オキシトシンは、ストレスやストレスによって生まれるネガティブな感情(怒り、心配、不安、恐怖など)をやわらげます。
老化を遅らせる・アンチエイジング
老化や全身のに慢性の炎症が深く関わっています。オキシトシンには慢性の炎症を抑える働きがあり、健康長寿につながります。
また、ストレスや葛藤、ネガティブな感情は酸化ストレスの原因となり、肌の老化を加速させますが、オキシトシンは酸化ストレスを緩和します。肌を健康かつ若々しく保ち、シワの発生を抑制してくれるのです。
免疫系が活性化
親切な行動をとることで、人とのつながりや愛情、思いやり、高揚を感じたり示されたりすると、免疫系が活性化します。免疫系の活性化は主観的健康感、幸福度の向上につながります。
人間関係を良くする
ホモサピエンスがアフリカに誕生して以来、厳しい生存競争の中生き残るには親切と協力が欠かせませんでした。それは現代も同じで、親切は幸福に欠かせない人間関係に欠かせないものとなっています。
夫婦間で親切な行動の多いカップルほど、幸せで、関係が長続きします。相手の話を聞く、呼びかけられたら相手の方を向いて返事をする、一緒にコーヒーを飲む、マッサージを互いにし合う、何かの作業を手伝うといった小さなことの積み重ねが、二人の関係を良くし、続かせることにつながります。
親切で幸福度を上げる方法
親切が幸福度に与える影響を初めて科学的に明らかにしたソニア・リュボミアスキー博士は、親切で幸福度を上げるには、タイミングと変化が重要であると述べています。
お勧めの方法は、リュボミアスキー博士が行った実験の中で最大の効果が現れた、
- 週に1日、曜日を決めて(例えば毎週日曜日とか)
- 新しくて特別な大きな親切を1つする or 小さな親切を3~5つする
というもの。
詳細は「幸福度を上げるエクササイズ ―親切にする」のページでご覧ください。
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幸福度を上げるエクササイズ ―親切にする
誰かに親切にすることで幸福度を高められるエクササイズを紹介します。親切な人はそうでない人に比べて、人間関係が良好で、より幸福です。この記事で紹介しているエクササイズを実践して、あなたの幸福度を高めてください!
小さなことに目を向ける
大げさな親切でなくてもOK。
些細なことでも、数多く積み重ねていくことで大きな影響を持つようになります。
例えば、同僚が何かを運ぼうとしているときに、「手伝おうか」と声をかけるだけでもいいのです。
一日の終わりに親切を数え上げる
小さなことでもいいので、自分のした親切行動を数えるだけでもそれなりに効果があります。
親切の回数を数えると自尊心が高まります。
自分で思っていたよりも自分は
- 親切な人間だ
- 人の役に立っている
と気付きます。
親切の記録をつけましょう!
親切の例:
- 誰かをほめる
- 人をなぐさめる
- 後から来る人のためにドアを押さえておく
- エレベータで乗り降りする人のために扉を開けておく
- 狭い通路で譲る
- 友人やパートナー、家族を支える
- バスや電車で座る必要のある人に席を譲る
- 重い荷物で難儀している人に、荷物を持ちましょうかと声をかける
- 道に迷っている人に声をかけて道順を教える
- 慈善団体に寄付する
- ボランティア活動に参加する
- 献血する
人の親切を見る
親切にすることで高揚を感じるとオキシトシンが分泌されますが、道徳的に素晴らしい行為を見るなどしてあたたかい気持ちになり高揚を感じることでも、オキシトシンが分泌されます。
例えばマザー・テレサのような、偉大な親切をし続けた人についての映像を見るのも1つの方法です。
そのような映像を見た後、親切行動をとる人が増える、親切行動が増えることもわかっています。親切は連鎖するのです。
「親切にすると幸福になる」と知って行う親切は、本当に親切と言えるのか?
上記のように、親切にはたくさんの効用があります。その効用を意識して行う親切は、もはや親切ではなく、自分のための利己的な行動になってしまうのではないか?そう思う人もいることでしょう。
(1) 親切にすることで得をしようと思っている。
(2) 親切の効用があることは知っているが、親切にすることは道徳的にも正しいことだから親切にする。
親切に効用があると知った上で親切にしようとする人の心理は主に、この2通りかと思いますが、結論は、「どっちでもいいんじゃないの?」です。とにかく親切にすることが大切。
いかにも欲得ずくめの(1)の考えで親切をしたとしても、温かな気持ちのやりとりをできるのではないでしょうか。親切行動を続けているうちに、結局「人に親切にするって素晴らしい」と気づき、輪が広まるなら素晴らしいことです。
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科学的に実証された、幸せになる方法を集めました
注意!親切が悪影響を与えることもある
全ての親切が、万人に歓迎されるわけではない、ということは常に念頭に置いておきましょう。
親切のつもりが、相手によっては「余計なお世話」になることもあります。
助けられた人が居心地の良くない立場に置かれることで、自分が貧しいからだとか、誰かの世話にならなければならない、といった気持になってしまうこともあるからです。
親切にした相手の反応が思わしくなかった時に、「なんだよ、人がせっかく親切にしてやっているのに」というネガティブな感情を抱いてしまうと、せっかくの親切が逆効果になりかねません。
また、自分の感情を押し殺す等過大な犠牲の上に行う親切も、逆効果になりかねません。過度な負担のない範囲で行う親切が好ましいと言えます。
親切にするときは、見返りや効用を期待せず行うのがベターと言えそうです。