困難に遭遇した後、それ以前よりも強くなる人がいます。困難を乗り越えた後、回復するだけでなく、以前よりも成長し、以前にも増して生き生きするようになるのです。
悲劇や苦悩の後に見られるこの現象は「心的外傷後成長」と呼ばれます。
相当な苦悩を伴うことであり、簡単なことではありませんが、困難を受け止め、立ち上がろうと努力することで、得られるものには大きな価値があると言えるでしょう。
この記事では、このPTGについて掘り下げます。
目次
PTGって何?
PTGとは「Post-Traumatic Growth(ポスト・トラウマティック・グロース)」の略で、日本語では「心的外傷後成長」と呼ばれます。
ニュース番組等でもよく取り上げられる「PTSD:心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder)」は聞いたことのある人は多いと思います。
非常に大きな苦痛を受けたことが原因で、様々なストレス障害を引き起こす疾患です。
「心的外傷後成長(PTG:)」はその真逆とも言えるもので、危機的な出来事や困難な経験に対して、もがき、闘った結果生まれる、ポジティブな心理的変化のことを言います。
同義の言葉に
- ストレス関連成長/stress related growth
- 逆境後成長/growth following adversity
もあります。
人が成長するために必ずPTGが必要である、ということはありません。
大切なのは、トラウマとなるような出来事が起こっても、私たちにはそれを乗り越え、成長につなげられる可能性があるということを、知っておくことです。
PTGの効果
人生における大きな困難を乗り越えるのは、簡単なことではありません。
しかしこれを受け入れ、もがき、奮闘した結果心に起こるポジティブな変化を起こす力を人は持つことができます。
そしてこれは、人生においてとても大きな糧となり、幸福度を大きく上昇させるのです。
PTGによって得られる心理的な変化によって、例えば、
- 自分の強さの理解が深まる
- 自分の能力に自信を持つ
- 人生、生活全体に感謝の気持ちを持つ
- 人間関係が強化される
- 視野が広がり新たな人生観を得る
といった効果があります。
また、PTGは精神的な健康だけでなく、身体的な健康にもつながります。
PTGを起こす3つの要素
人生にはしばしば大きな困難が伴います。そのような時、私たちはどうすれば、その困難を乗り越えて成長していけるのでしょうか。
多くの場合、次の3つの要素がPTGを引き起こします。
起きた出来事を理解しようとする態度
どのような要素や要因がその出来事につながったのかを解明しようしたとき、ほぼ自動的に、起きた出来事を理解しようとしています。
その後、人生を全体として理解し直そうとしたり、起きた出来事についての考え方を変えてポジティブな側面を見出そうとしたりします。
価値観や性格の変化を伴うこともあります。
逆境に対する前向きな態度
ナチスの強制収容所に入れられていたオーストリアの精神科医ヴィクトール・フランクルは、逆境に対してどのような態度を取るかが重要であると主張しています。
「もうおしまいだ」と思い落ち込み続けるか、「これは自分にとってチャレンジする機会だ、と挑戦する態度を持つかで、PTGを遂げるかどうかの差が出ます。
人からの支援
PTGに欠かせない最後の要素は、人からの支援です。
周囲の人からの温かな励ましや共感は、感情を吐き出させてくれたり、成長を促したりしてくれます。
それが、困難に適応する可能性を高めてくれます。
終わりに
既に書いたように、PTGがなければ成長できない、ということではありません。
トラウマ自体は決して望ましいものではありませんが、トラウマとなるような出来事は時に、私たちの人生をより意義深いものにしたり、知恵を身に付けたり、価値観の変化をもたらしたりします。
人生に困難はつきものです。
PTGを繰り返すことで、私たちは何が起きてもへこたれない強さを持てるようになるのかもしれません。それはきっと、高い幸福度につながっていくことでしょう。