ネガティブ感情が大きい時にはあまり良い気分はしませんが、だからといってネガティブ感情を無くせばいいわけではありません。ネガティブ感情も必要な感情です。
幸福・幸せという視点から見ると、ネガティブ感情は必要ですが、ポジティブ感情よりも相対的に少ないことが望ましいと言えます。
この記事ではネガティブ感情の概要と対処法などを記しました。幸福度アップの一助となれば幸いです。
目次
ネガティブ感情について基本的なこと
まずはネガティブ感情について知っておきたい、基本的なことから。
ネガティブ感情の例
私たちは、人や物事に対して様々な感情を抱きます。その感情の中から、ネガティブ感情の例をピックアップしました。
- 不安
- 劣等感
- 焦燥 (焦り)
- 嫉妬
- 悩み(苦悩、懊悩、煩悶)
- 苦しみ
- 悲しみ
- 恐怖
- 屈辱、恥辱
- 軽蔑
- 怒り
- いらだち
- 嫌悪
- 憎悪
- 恨怨、恨み
- 殺意
- 諦念 (諦め)
- 絶望
- 空虚、空しい
- シャーデンフロイデ
- 罪悪感
- 後悔
- 無念
ネガティブ感情の役割
冒頭に記したように、ネガティブ感情は気持ちの良いものではありませんが、ネガティブ感情を無くせばいいというものではありません。
ネガティブ感情には、以下のような役割があります。
- 危険を察知する
- 心の働きを制限して、目の前の危機に対処する
- 自分が無理をしていたり、自分の感情を押し殺したりしていることに気付かせる
- 他者への共感力を高める
- 変化や成長のきっかけを作る
ネガティブ感情を引き起こす「ネガティブ・バイアス」は、私たちの祖先がはるか昔に生存競争に勝って生き残るためにとても大事なものでした。
ネガティブ・バイアスの詳細については下記記事をご覧ください。
ネガティブ・バイアスを理解して、幸福度アップに役立てよう
幸せを阻むネガティブ・バイアスとは?この本能を上手に調整して幸福度を上げましょう!ネガティブなことにより注意を向けがちな「ネガティブ・バイアス」は生まれ持った性質ですが、ちょっとした工夫で調整&幸福度アップ!
不適切で不当なネガティビティ
ネガティブ感情は確かに必要なのですが、日常しばしば抱くネガティブ感情の全てを抱え続けるべきではありません。
ポジティブ感情研究の第一人者であるバーバラ・フレドリクソンは、「不適切で不当なネガティビティ」を減らすべきと著書に書いています。
適切なネガティビティは、人を正したり発奮させたりしますが、誰かの心ない一言を気にしてくよくよし続けることは、幸福度アップにつながらないだけでなく、心の健康すら害してしまいかねません。
私たちには、ネガティブ感情も含めて全ての感情が大切ですが、不適切で不当な感情もあると理解し、自分の感情に対処する必要があります。
ネガティブ感情を増幅させる「反芻思考」
ネガティブなことを頭の中で何度も繰り返し考えすぎてしまうことを「反芻思考」と言います。
誰でもネガティブな気持ちになることはあります。問題は、その感情を「持ち続けて心の中で繰り返すこと」。
しかし、「なんであんなことをしてしまったのだろう」とか「自分はなんてダメなんだろう」のように、考えても仕方のないことについてネガティブな思考を繰り返すと、不適切で不当なネガティブな感情は消えないだけでなく、増幅してしまうこともあります。
幸せになる技術 ―ネガティブ思考・反芻思考(はんすう思考)をやめる
反芻思考の癖を直す、反芻思考をやめる方法をまとめました。ネガティブな思考を繰り返し考えてしまう「反芻思考」は幸福を妨げます。反芻思考に気付いて止め、幸福への第一歩を踏み出しましょう。
ネガティブ感情に対処する
ネガティブな感情を意味なく強めたり長引かせたりすると、ネガティブ感情が増幅し、心身の健康をも害してしまうことがあります。
ネガティビティをもたらす「認知の歪み」や「反芻思考」はうつ病の原因の一つでもあり、幸福度を下げる要因にもなります。
この記事では、ネガティブ感情に対処する方法として代表的な「トリプルカラム法」と「ABCDE理論」を紹介します。
これらの他にも様々な対処法があります。自分に合う方法を実践してネガティブ感情を減らし、幸福度アップにつなげていきましょう。
「認知の歪み」から解放される「トリプルカラム法」
不適切で不当なネガティビティの多くは、「認知の歪み」から生まれます。
薬物療法によらないうつと不安の治療法、認知療法・認知行動療法のパイオニアであるデビッド・D・バーンズは、不適切で不当なネガティブ感情を引き起こす「認知の歪み」を正す、「トリプルカラム法」を提唱しています。
3列の表に、
- 自分の感情
- そこに見出せるある認知の歪み
- 合理的な反応
を書き込んでいくものです。
トリプルカラム法の手順
step
1左:自動思考
「ネガティブ感情の例」に示したようなネガティブな感情に襲われたとき、心に浮かんでくる自己批判的な考え・自動思考を左の欄に全て書き出す。
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2真ん中:認知の歪み
下記「認知の歪み」リストを見ながら、自動思考の中に歪みを見つけ、真ん中の欄に書き出す。
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3右:合理的思考
自分の自動的な反応よりも合理的で、ネガティブではない反応のし方考え、を右の欄に書く。
トリプルカラムの例
自動思考(自己批判的) | 認知の歪み | 合理的反応(自己弁護的) |
毎日憂鬱だ。 いいことが何もない。 昨日上司が企画案を褒めてくれたけど、たまたま機嫌が良かっただけだろう。 | マイナス化思考 | 我ながら良い企画だと思ったけど、上司にも認められてよかった。頑張った甲斐があった。 |
認知の歪みの例
オール or ナッシング思考
物事を白か黒かのどちらかで判断する態度。
ちょっとしたミスでも、それがあるだけで完全な失敗と思い込む。
一般化のしすぎ
たった1つでも良くないことが起こると、世の中全てこうだ、と考える。
心のフィルター
たった1つの良くないことにこだわって、そればかりをきょくよ考え続け、現実を見る視点・態度が暗くなってしまう。
マイナス化思考
良い出来事を無視して、良いことやちょっとしたことも全部悪いことにすり替えてしまう。
結論の飛躍
根拠なく悲観的な結論を出してしまう。
心を深読みして他人が自分に悪く反応したと早合点したり、誤って先読みして事態が確実に悪くなると決めつけたりする。
拡大解釈(破滅化)と過小評価
自分の失敗を大袈裟に考え、長所を過小評価する。逆に、他人の成功や長所を過大に評価し、他人の欠点が見えない。
感情的決めつけ
自分の憂鬱な感情は現実を反映しているものだなど、自分の感情が真実を証明すると考える。
すべき思考
何かやろうとする時に「~すべき」または「~すべきでない」と考える。そうしないと罰を受けるかのように感じて罪の意識を持ちやすい
レッテル貼り
一般化のしすぎの極端な形。失敗すると「自分はもうおしまいだ」など感情的で偏見交じりのレッテルを貼る。
個人化
何か良くない出来事が起こった時に、自分に責任のないことでも自分のせいにする。
ネガティブ感情を紐解く「ABCDEモデル」
ネガティブな感情の原因が、思い込みであることもしばしばあります。
偏った思い込みが、必要以上に自分や他人を責める気持ちを強めてしまい、ネガティブ感情を引き起こすのです。
「ABCDEモデル」では「トリプルカラム法」と同じように、ネガティブ感情のもととなっている部分を理性のレンズを使って見て、思い込みを紐解き改めます。
(ABCDE理論の詳細は今後追加予定)
ネガティブ感情のその他の対処
ネガティブ感情と向き合えない時
「自分を傷つけた人を許せない」といったネガティブ感情を昇華させる方法として、自分の心の中にある思いと向き合い、浮かんでくる感情を紙に書き出し、書き出した紙を燃やす、破って捨てるといったものもあります。
しかし、傷がまだ新しく深い時には、その出来事やそれによって受けた自分の心の傷と正面から向き合うのが辛いこともあるでしょう。
自分の心と向き合うには、心の強さや時間が必要です。まだその時ではないのに無理に向き合あおうとすると、傷が大きくなってしまう危険性があります。
向き合うことのできる感情から紹介した対処法を実践し始め、深刻なレベルの問題については、向き合えるタイミングが来た時に実践するなど、時期を調整しましょう。
「気分転換」でネガティブの連鎖を断ち切る
向き合えるようになるまでの間は、「気分転換」などの工夫をして、ネガティブ感情が続かないようにしましょう。嫌なことからただ逃げるのではなく、ネガティブ感情やネガティブ感情をもたらす問題に対処できるようになるために、気分転換をするのです。
気分転換によってネガティブ感情に対するポジティブ感情の比率を上げることで、心身の健康や創造性も高まり、やがて問題に対処する力を付けていけるでしょう。
気分転換は、とてもシンプルですが強力な方法です。
まずは、自分の気分がネガティブな方に傾いていると気付きましょう。
ネガティブ感情に気付いたら、その感情をもたらしている問題から意識をそらします。ウォーキング、楽しい音楽を聴く、きれいな景色を見る、いつもポジティブな人に話しかけに行って笑い合う、大好きなお菓子を食べる、等々、自分の気分を上げてくれる何かでネガティブ感情をリセットするのです。
ただし、お酒やパチンコ、オンラインゲームなどは、気分転換になるとしても好ましくありません。依存性があるため、問題が大きくなってしまう可能性があります。また、テレビを何となく見るのもやめましょう。
マスメディアやSNSとの距離
テレビとの付き合い方には工夫が必要です。
大好きなシリーズの番組を見る、といった視聴の姿勢はいいのですが、特に見たい番組があるわけではないのに何となくテレビをつけて何となく見るのは良くありません。
マスコミは悲惨な出来事や残酷な事件、しょうもないゴシップなど、ネガティブ感情を呼び起こすものをたくさん集めて放送します。ある調査では、テレビの視聴時間が長い人ほど、世界は暴力で満ちていると考える傾向があるという結果が出ました。
インターネット上のニュースやSNSとの付き合い方も同様です。
テレビを消しても、スマホなどで世界で起こる悲惨な事件のニュースばかり見ていては意味がありません。SNSも、見ていて楽しいならいいのですが、嫉妬や不安などのネガティブ感情を呼び起こす投稿も中にはあるはず。
テレビや情報端末の使用を一切やめる必要はありません。ただし、感情のバランスに気を配って、見るものを選択するようにしましょう。