幸福を妨げるものに、「考えすぎること」があります。
「反芻思考」と呼ばれるもので、未来や過去のことを考えすぎてしまい、気分は落ち込みがちに。うつ病の原因になるとも言われています。
ネガティブ思考を続けてしまう反芻思考は、幸せの邪魔となります。
目次
反芻思考とは
ネガティブなことを頭の中で何度も繰り返し考えすぎてしまうことを「反芻思考」と言います。
誰でもネガティブな気持ちになることはあります。問題は、その感情を「持ち続けて心の中で繰り返すこと」。
過ぎたことや考えても仕方のないこと、考えても解決しないことを、ネガティブな方向で何度となく考えてしまう「反芻思考」は、自分自身を縛り苦しめることにつながります。
抑うつ的反芻(rumination:ルミネーション)は、何度も同じことを思い出して考え、悩み続けて、抑うつ気分を増長させることを指します。もともと反芻(はんすう)とは牛などの動物が、一度飲み込んだものを胃から口に戻し、繰り返し噛むことです。抑うつ的反芻は、動物の反芻に似た精神行動であることから、この名称が付けられました。
反芻思考の弊害
失敗してしまった後に反省や熟考を重ねることは、決して弊害ばかりではありません。
しかし、「なんであんなことをしてしまったのだろう」とか「自分はなんてダメなんだろう」のように、考えても仕方のないことについてネガティブな思考を繰り返すと、ネガティブな感情は消えないだけでなく、増幅してしまうこともあります。
また、ネガティブな反芻をしがちな人は落ちこみやすく、ストレスに対して抵抗力が弱い傾向があります。
私たちが生きていく上で反省は時に必要ですが、「必要以上に考えすぎる」ことが有害であることは、過去数十年の間に多数の研究が証明してきました。
ネガティブに偏った考え方が育ち、逆に問題を解決する能力や意欲、集中力といった能力が低下してしまい、不安障害やうつ病を発症する恐れさえあります。
心理学者はこのような思考形態を「反芻」と呼びます。ネガティブ思考とネガティブ感情が頭の中に繰り返し現れるのです。状況をあらゆる方向から見つめて、自分では「しっかり考えなくては」と思っていますが、実際には思考はどこにも向かいません。きりのない問いかけの轍にはまり込んで、打ちのめされて気力を失います。考えても、答えが見つかるどころか自信がなくなっていきます。
出典:バーバラ・フレドリクソン『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』
最も不健康かつ一般的なクセは反すうです。(中略)腹の立つ出来事の反すうは簡単にクセになり、しかもその代償はとても大きいんです。非常に多くの時間が腹立たしくてネガティブな思考への集中に使われ、自分を大きなリスクにさらすことになるからです。うつ病やアルコール依存症、摂食障害、はては心血管疾患まで。
幸せへに近づく一歩:反芻思考をやめること
くよくよ・うじうじ、繰り返し考えることが習慣のままだと、今より幸せになるのは困難です。
反芻が習慣になっている人にとって、幸せに向かって進むための第一歩は、この習慣を止めること。自分が反芻思考をしていることに気付いて、ブレーキをかけましょう。
人はネガティブ感情を持つと、わざわざネガティブ思考を選んで呼び寄せるということが様々な研究で明らかになっています。だから、普通の考え方、楽観的で前向きな考え方に思考の方向を変えるには、まずはネガティブなことを繰り返し考えるのをやめる必要があります。
幸福な人は、暗い考えや不安から自分の意識を逸らす能力を身に付けています。幸福な人は、辛い出来事が起こらないから幸福なのではありません、辛い状況にあっても、暗い考えや不安にとらわれないようにしているのです。
「最も不幸せ」とされる人たちは、辛い経験や自分の良くない面についてくよくよ考えがちで、そのせいで集中できず、日々の生活に支障をきたしてしまうこともあります。
まずは、自分が反芻思考をしていることに気付きましょう。
反芻思考に気づいたら、自分の意識を「そらす」
反芻思考を止めるには、思考をそらすという方法が大変有効です。
たった2分間でも気を紛らわすだけで効果があります。
ネガティブなことを繰り返し考えているな・・と気が付いたら、自分の好きなものを見たり、好きなことを始めるなどして、思考をそらします。
それをする・見ることで幸福感が増したり、わくわくするものがベストです。例えば、好きな本や写真、音楽をいつも傍らに用意しておくのもおすすめ。
あまりに単純な方法なので、あまり高く評価されないかもしれませんが、とても強力な方法です。
これを実践した、心理学者でありNYの人気セラピストでもあるガイ・ウィンチ氏はこう言っています。
研究によると たとえ2分間でも気を紛らわすと良いんです。するとその瞬間は反すうの衝動から解放されます。ですから不安や動揺 ネガティブな思考におそわれた時はいつも僕は衝動が去るまで他の事に集中するようにしていました。
1週間もしないうちに物の見方が変わりました。もっとポジティブになり希望をもてるようになりました。
反芻思考の癖を直す10の方法
瞑想、マインドフルネス
考えすぎる癖や心配事から距離を置くトレーニングになります。
反芻思考に気付き、そこから意識をそらすトレーニングにもなるし、幸福度を全体的に底上げする、仕事の効率を上げる、といったことにも大変有効です。
幸せになる技術 ―瞑想しよう!
人が幸せになる上で、瞑想が様々な点において有効であることが、多くの研究によって明らかにされてきました。感情と脳研究の第一人者デビッドソン博士は、瞑想は「やったほうがいい」ではなくもはや「やるべき」と言い切っています。その理由とは!?
私は主に下記の本でマインドフルネスを学びましたが、少々専門的なので、マインドフルネスについて本格的に学びたい人におすすめです。マインドフルネスについては一般的な参考書もたくさん出ているので、ぜひ探してみてください。
反芻思考に気づいたら、「ストップ!」と言う
ネガティブなことを繰り返し考えているな・・と気が付いたら、「ストップ!」とか「だめ!」と心の中で自分に言い聞かせたり、実際に口にしたりして、自分の反芻思考にダメ出しをします。
そうしてネガティブ思考を止めて、その時目の前にあることやその時必要なことに集中しましょう。
ソニア・リュボミアスキー『幸せがずっと続く12の行動習慣』で紹介されていた例で、この方法を実施している人は、「ストップ!」と言う時に、真っ赤な一時停止の標識を思い浮かべるそうです。
どんな方法でもいいので、反芻思考を止める方法を考えてみませんか?
私も気になることがあると、たまに反芻思考をしてしまう時があるのですが、その時には首を横に振って「いかんいかん、また考えてしまった」と言って、立ち上がって何か別の集中できそうなことをすることにしています。
反芻思考を先送りする「ウォーリー・リダクション」
「ウォーリー」は「worry/心配」、「リダクション」は「reduction/縮小、減らすこと」という意味です。悩むための時間を決めて、それ以外は悩まないことにする、というものです。
例えば、毎晩8時から15分間を集中して悩むための時間にします。昼間、「ネガティブなことを繰り返し考えているな・・」と気が付いたら、「夜にゆっくり悩む時間があるから、今は目の前のことに集中しよう」と反芻思考を一旦止めるのです。
これは、時間の浪費防止や心の休息、感情のコントロールにつながります。
反芻思考から意識をそらすアイテムを持つ
反芻思考に気が付いた時に、そこから意識をそらすためのアイテムです。
例えば、ペットや旅行に行った時の写真、好きな絵、かわいい動物の動画など、一瞬で自分の気分を上げてくれるものです。
こういったものを、携帯電話に保存しておいたり、手帳に挟んでおいたりと、いつでも見られるように手元に持っておくのです。
輪ゴムぱっちん
手首に輪ゴムをはめて、反芻思考に陥ったと思ったらゴムをパチンと弾く、という方法です。
とても簡単で単純な方法ですが、心理学の研究に基づくもので、小さな痛みが理性を取り戻すきっかけになります。
体に刺激を与える方法は、思考をネガティブなことからその時集中するべきことに向けるには有効です。
「失敗したらどうしよう」「またあんなことをしてしまった」など、ネガティブ思考が止まらない時に、わずかな痛みを自分に与えて気持ちをリセットするのです。
今、この時は一瞬限り。
「今、ここ」を大切にするために、輪ゴムぱっちんでマイナス思考をストップさせましょう。
自然の中を歩く
木々に囲まれた自然豊かな環境で歩くと、反芻思考を含むネガティブな思考が減るという実験の結果が、2015年6月、米国の「国立科学アカデミー紀要」に発表されました。
この実験を行ったのはスタンフォード大学の研究チームで、非常に注目を集めました。
都市部のウォーキングと自然の中でのウォーキングとでは、わずか90分のウォーキングでも環境の影響が大きく、自然豊かな環境でウォーキングしたグループでは、都市でウォーキングしたグループに比べ、反芻思考が減ることが明らかになったといいます。
過ぎたことは忘れる or ポジティブに捉えなおす
過ぎたことは忘れましょう。
過去の事実はくよくよ考えても変えられません。
考えるだけ時間も労力も無駄です。
もしくは、ポジティブに捉えなおしましょう。
それなりにダメージはあったけど、●●の点では有意義だった。
この経験は、今は辛いけれども、時間が経てばきっと自分の糧になる、等々。
キングコングの西野さんが近畿大学の卒業式で行ったスピーチで語った「僕たちは、過去を変えることができる」と同意です。
まずは、「もしあのようにしていたら・・」「あのときああしていれば・・」といった「タラレバ」をやめましょう。
そして、「次回はこうしよう」「次回はこういうふうに言おう」といった「今後の課題」をポジティブに設定します。
そうしたら、過去のことをくよくよ考えるのはやめましょう。
若いうちは自分の失敗をよく覚えているから、人の目が気になるかもしれませんが、ほとんどの人は意外とそんなに人の失敗を気にしていないものです。思い出して辛くなるようなことは、どんどん忘れていいのです。
そして、人の過去の失敗ばかりをよく覚えていて指摘するような、ネガティブ思考で人の不幸が大好きな人とは距離を置きましょう。
自分の良いところを数え上げる
「自分はなんでダメなんだろう」という、自己否定の反芻思考を繰り返す癖のある人に有効です。
自分の欠点に気が付くということは、すばらしい気付きですが、欠点だけの人はいません。
どんな人にも、長所と短所があります。ちょっとしたことでもいいので自分を褒めて、自己肯定感・自尊心を高め、自分を好きになりましょう。
身近な友人や先生、あるいは家族が欠点にばかり目を留める人だと、良いところは無視されて、欠点ばかりが指摘されてしまうことがあります。
でも、それに同調する必要はありません。自分自身の良いところは自分で気付いて褒めてあげるべきです。自分を責めるのではなく、自分を褒めることを習慣にしましょう。
夜寝る前に、鏡を見ながら「君は今日も一日頑張ったね」「君はなんて偉いんだ」と自分に話しかけたり、日記にその日一日自分がどれほど良いことをしたかや、その日誰かにした親切などを書いたり、といったことで、自分を肯定的に評価するトレーニングができます。
何か行動してみる
繰り返されるネガティブ思考で何をする気にもなれないかもしれませんが、どんなに小さなことでもいいので、第一歩を踏み出してみることです。
もし、自分の性格が嫌なのであれば、心理学の本を買う、カウンセリングの予約をする、自己啓発セミナーに行ってみる、といったことが考えられます。
また、反芻思考から意識をそらせるくらい、集中できる趣味を持つことも有効です。
親切な誰かが突然現れて自分を救ってくれるのを待つのではなく、自ら行動しましょう。
反芻思考の原因を避ける
どのようなことがあると、反芻思考に陥るでしょうか?
反芻思考のきっかけとなる状況を書き出してみましょう。
場所、時間、人など、決まったバターンが見えてくるかもしれません。
自分を反芻思考に陥らせるものがわかったら、反芻思考の癖が抜けるまでの間、そのような場所や人、コトなどを一時的に避けるようにするのも一つの手です。
視野を大きく持つ
何か嫌なことがあって、それにとらわれてつい考えすぎてしまいそうな時、自分にこう問いかけます。
「これは1年後にも重要だろうか」
「自分が死ぬときにもこれについて考えていたいだろうか」
もし将来に影響しないような問題でないなら、さっさと忘れるに限ります。
将来にわたって長く影響することなのであれば、その経験から何を学び取れるのかを考えましょう。ネガティブな経験からも学んで自己の成長につなげることで、幸福度を高めることが可能です(心理学で「外傷後成長」と呼ばれます)。
この本も参考になります
深い思索と反芻思考の違いは?
問題解決や状況改善のために深く考えることと、有害な反芻の違いは何でしょうか?
基準の一つが、「その問題について悩むのに、何時間使ってきたか」という「時間」です。
何か月も、何年もその問題で悩み続けているとしたら、それは反芻である可能性がとても高いと考えられます。
一定の時間その問題について考え、良い解決策が思い浮かばないようであれば、その問題は一旦心から離しましょう。ポジティブ感情を高めるような気分転換をして、気持ちをポジティブにしたらよい解決策が見つかるかもしれません。
ポジティブ感情は、創造性を高めてくれます。
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